ここ数週間のセキュリティインシデント発生について、連日ニュースや情報番組で取り上げられていますが、怖いですね。多くの組織が情報漏洩の被害にあっていて、留まるところを知らない、という勢いです。「いったい、世の中で何が起きているのか?」と思ってしまいますが、この背景にはやはりAIがキーポイントとしてありそうです。攻撃者側の方がAIをより巧みに活用できてしまっている気がしていて、私たちがこの現状に対しどう向き合っていくのかを、真剣に考えなければいけない段階に入っていると感じています。
前回の投稿、「「SaaSの死」の時代、IT人材が持つべき能力とは? その2 ~設計力~」では、これからのIT人材がAIを積極的に活用して自社システムを開発していくうえで、設計力が必要であることに触れました。アーキテクチャーの観点、非機能要件の観点などでAIと対等に語り合えることで、安心・安全で使いやすいシステムができると思っています。本投稿では、もう一つの力である「業務理解・改善力」について触れたいと思います。
平たく「業務理解力」と書きましたが、厳密に言うと「業務を機能として落とし込める力」でしょうか。
例えば、法人営業の営業プロセスを例にした場合、「営業案件が発生すると、営業担当がその案件を登録する。提案資料などで何度かアポをとって提案を行うが、その履歴も今後のノウハウになるため記録したい。案件の確度が上がってきたらその状況も記録し、どの確度の案件がどのくらいあるのかを可視化したい。見積を提示する段階になると見積作成のために、申請・承認の流れがある。その承認フローは…」など、適切に業務の流れを示す必要があります。適切に業務の流れを示すことができれば、Claude側で「ということは、画面としてはこういう画面が必要で、データベースのテーブルとしてはこういうものが必要ですね。」など、ある程度構造化して示してくれます。
もちろん、それに対し「いや、その流れの他にこういうパターンもあるから、このパターンも考慮してほしい。」など適宜指摘していく必要はありますが、どちらにしても業務を的確に伝えるということは必須の力になると思います。
上記の通り、業務を的確に伝える力は必須ですが、「現状の業務プロセスが最適なのか?」という視点も重要です。数年前の投稿、「 「情報通信白書 令和3年版」から今を読む その3 ~ITによる業務効率化の今~」でも似たようなことを書きましたので、その繰り返しになりますが、ここでも触れたいと思います。
業務の合理化を行ううえでの進め方を示した、「ECRS」というものがあります。Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)の頭文字をとったもので、「業務合理化とは、まず不要な作業を無くし(E)、次に類似する作業の結合と異なる作業の分離を行い(C)、さらに作業順序や作業場所などの入れ替えを行い(R)、そのうえで各作業要素の簡素化(効率化)を行う(S)」という考え方です。
このうちITが絡むのは最後のSのみですが、ITを導入する際にその前のECRをすっ飛ばしてSのみを考えてしまうことはよくあります。私たちはシステムを作りたいのではなく、業務を最適化したいのですよね。この意識は、常に持っておきたいところです。この点は「業務改善力」の一つですね。
こちらも先ほどの過去記事で触れている話ですが、IT導入における要件定義では「現行のシステムではこういうことができるけど、新システムではできる?」という現行踏襲を求める話が多く、業務を改善するという意識が薄い傾向にあるように思います。導入ベンダー側も今までのやり方に慣れてしまっていて、つい「現行はどうですか?」など現行を基準とした検討を行ってしまいがちです。
この機会に、「現行踏襲は悪」くらいの意識を持ってしまってもよいのではないでしょうか。どうしても、自然に現行踏襲の意識に寄って行ってしまうため、このくらいの強い意識を持っておけば、結果としてフラットに開発プロジェクトに向き合えるのではないかと感じています。この点も「業務改善力」の一つですね。
最近のシステム導入では、自社のビジネスプロセスとSaaSの機能におけるFit & Gap分析が重要だったりしますが、この辺りは大きく変わっていきそうです。