松田 幸裕 記
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)より、「DX動向2024」が公開されました。
この情報の位置づけとしては、以前何度か公開された「DX白書」を引き継ぐ形で、最新の調査結果を公開するものとのことです。ITに携わる者としては、この辺りの動向は理解しておいた方がいいと思いますので、概要レベルでも読んで理解することをお勧めします。本投稿では、この資料を読んで改めて「?」と感じたいくつかの点について、触れてみたいと思います。
改めて、DXって何?
最近では、DXという用語を頻繁に耳にするようになりました。例えば中途採用面接などでも「DXを推進してきました」という形で聞くこともありますし、各企業で「DX推進室が発足した」という話も聞きます。ただ、最近ではDXを単なる「IT化」として使っているのではないか?と思うことも多くなっています。そこで、改めて「DXって何?」を考えてみたいと思います。
「DX動向2024」におけるDXの定義
今回公開された「DX動向2024」におけるDXの定義としては、以下だと書かれています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
他の文献でも概ね同じようなことが書かれていますが、もう一声シンプルにすると、「データとデジタル技術を活用してビジネスを変革し、競争上の優位性を確立すること」ですね。一度だけビジネスを変革したところで、競争上の優位性は維持できないため、「ビジネス変革を継続して行う」、「ビジネス変革を継続できる土壌や仕組みをつくる」ことが重要になります。
これを見ると、ITは単なる手段でしかなく、DXとは「ビジネスの変革」であることがわかります。よく「デジタル・トランスフォーメーション」ではなく「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」という用語でDXを説明している記事を見かけますが、現在定義されているDXは正確には「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」になりますね。
DXの分類?
ただ、今回の調査ではDXを上記の定義で質問しているわけではなさそうです。本資料では、「DX取組の分類」として下図で説明されています。
図:DX取組の分類(IPA「DX動向2024」より)
この調査では、単なる「情報のデジタル化」や「業務効率化」なども「DX」として扱って「DXに取り組んでいますか?」と聞き、その中で「で、あなたが言っているDXは、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションのうちどれですか?」と深掘りしているようです。そう考えると、DXの取組状況(下図)で少なからずDXに取り組んでいる企業が全体の7割を超えるというのは、納得感があります。
図:DXの取組状況(IPA「DX動向2024」より)
以前の投稿「日本におけるDX推進の阻害要因を探る」でもこの3種類の用語について触れましたが、ここで扱った総務省の「令和3年 情報通信白書」では少し異なった説明になっています。情報通信白書では、「デジタル化には、デジタルトランスフォーメーションの他にデジタイゼーション、デジタライゼーションがある。」、「これまでに企業が実施してきた情報化・デジタル化(デジタル技術を用いた単純な省人化、自動化、効率化、最適化)はデジタル・トランスフォーメーションとは言い難い」と説明されています。
IPAで説明されている「DX(デジタルトランスフォーメーション)の中にデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションがあります。」という、親と子の名前が同じになってしまっている構造より、白書の「デジタル化の中にデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションがあります。」という構造の方がわかりやすいですね。
今回の「DX動向2024」を読むときには、この辺りの定義について理解したうえで読むことをお勧めします。
本投稿ではDXの定義で留め、次回以降ではこの定義を踏まえ、別の観点について触れていきたいと思っています。
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