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日本の少子化問題を問題解決フレームワークで考える その2

松田 幸裕 記


前回の投稿「日本の少子化問題を問題解決フレームワークで考える その1」では、深刻化している日本の少子化問題を問題解決フレームワークの一つであるロジックツリーを使って考察してみました。投稿後にも自身の反証の意味も込めて、Webで考察が書かれているページをいくつか見てみましたが、最近では「結婚したのに子供を産まない」という人が増えてきたという考察も見られました。時間がある時に、私自身ももう少し調べてみようと思っています。

問題の原因を調べるために、アンケート調査が行われることがあります。アンケート調査の結果が正しいのか?という話が出てくることは多く、例えば「アンケートを収集する数が少なすぎるのでは?」、「満足度調査を行いたいが、不満がある人の方が回答率が高いため、実際より満足度が低く出ないか?」など、アンケート調査において気を付けなければいけないことは多くあると思います。本投稿では、問題解決フレームワークには含まれないかもしれませんが、少し違う角度で「アンケート調査において気を付けなければいけないこと」について考えてみたいと思います。

情報番組での話の進め方

テレビの情報番組でよく少子化問題が取り上げられていますが、概ね「街の人の声を聞く」→「声が多いテーマについて深掘り」という流れになると思います。これ自体は番組の構成上仕方のないことだと思いますが、「街の人の声を聞く」よりも「アンケート調査を行う」の方が信憑性は高いですよね。実際に、街の声だけでなくアンケート結果を示してくれる番組もあり、説得力は高まります。

ただ、適切な数で、偏らずにアンケート調査が行えればそれで信憑性が高くなるかというと、そうでもない気がしています。

ユーザビリティの法則

ここでは少し視点を変えて、ユーザビリティの話をしたいと思います。例えば業務アプリケーションの刷新などを行う際、ユーザーの「ここが使いづらい」、「こういう機能があったら嬉しい」などの声を聞くことが多いですよね。ただ、このような活動が正しいかというと、そうでもないようです。

ユーザビリティの第一法則? ユーザーの声は聞くべからず

ユーザビリティの第一人者と言われているヤコブ・ニールセン氏が20年以上前に書いたものです。「ユーザーの声は聞くべからず」という衝撃的なメッセージに当初は驚きましたが、非常に納得感があります。実際に利用しているユーザーの「この部分が使いづらい」などは事実として有効としても、例えば「こういう機能があれば嬉しい」などの声はあくまで将来に関する推測であるため、信憑性は低いと思った方がいいということになります。実際に、「こういう機能がほしい」、「ああいう機能がほしい」という要望を聞き入れて作られたアプリケーションの多くの機能は、ほとんど使われないという話をよく聞きますよね。

少子化問題の原因

先ほどの情報番組での街の声やアンケートでは、「子供を産まない理由」、「どうしたら子供を産もうと考えるか」などのテーマで聞くことになりますが、例えばその回答が「お金がもう少しあったら…」というものだとして、本当にお金がもう少しあったら子供が増えるのか?というと、そうでもないのではないでしょうか。その人がこれ以上子供を産まない真の理由、そしてどうなったら産むと思うかは、本人もわかっていないかもしれません。

また、例えば「なぜ結婚しないのか?」と質問をすると、本当はいい相手がいれば結婚したいのに、「一人の方が気楽」、「結婚というものに魅力を感じない」などと回答してしまう人も結構いるのではないでしょうか。

少子化問題を対策していくうえで国民の声を真摯に聞くという姿勢は素晴らしいことだと思いますが、声を鵜呑みにしてしまうと原因をはき違えてしまい、対策も誤ったものになってしまうかもしれません。

同じサイトにて「アンケート調査における10の課題とその回避方法」というページも見つけたため、参考までに共有します。アンケートに代わる適した手法がなかなか無いことは課題ですが、少なくとも「アンケート結果は必ずしも正しいわけではない」ということを理解し、適切に活用するということが重要なのではないでしょうか。