松田 幸裕 記
ハーバード・ビジネス・レビュー2024年5月号にて、「リーダーの思考法」というテーマで特集が組まれていました。
前回の投稿「従業員エクスペリエンス プラットフォーム(EXP)のすすめ」にて、「組織は心を持った人の集まり」という話をしましたが、その「心を持った人の集まり」である組織をリードしていくのがリーダーです。前回の投稿でも書いた通り、人間の心は非常に難しいもので、心理学もまだ何が正解なのかは実はわかっていない、哲学に近い学問だと思っています。ただ、わからない中でもこのような最新の論文で気づきを得つつ実践していく、いわゆる仮説と検証を繰り返していくことが大切だと感じています。
以前の投稿「現代社会で求められるリーダーシップとは」で触れましたが、約4年前の2020年7月でも「答えのない時代をともに切り拓く リーダーという仕事」というリーダーシップに関する特集が組まれていました。その時は「変化が激しく、答えのない不明確な状況が続く現代に、どのようなリーダーシップが求められるのか」という内容でしたが、今回のテーマは「思考法」ということで、組織をリードしていくうえでの思考、スタンス、能力などについて触れている論文が多く載っています。興味がある方はぜひ購入して読んでみてください。
今回の特集で私が興味深いと感じたのは、リクルートホールディングス 代表取締役社長兼CEO 出木場 久征氏の「僕は世界で一番、権威や権力のないCEOになりたい」というインタビュー記事です。
タイトルにある通り、出木場氏は代表でありながら権力を振りかざすようなことはせず、「情熱を注いでいる人たちが自分たちで決めて進めるべき」という考え方で、権限委譲をしてきたそうです。私自身、これと似た考え方で当社を創設したこともあり、興味深く読ませていただきました。
リチャード・ライアンとエドワード・デシにより1980年代に提唱された、モチベーションに関する重要な理論である「自己決定理論」では、自己決定(自己の行動を自分自身で決める程度)が大きければ大きいほど、モチベーションも高くなると言われています。「決めるのは私ではなく、上の人である。私は決められたことをやるだけ。」という考え方を持つと、人間は考えて行動することをやめてしまいます。人間の基本的な欲求の1つである「自律性(自分の行動を自分自身で決めたい)」が満たされないため、内発的動機づけが促進されず、やる気も出ません。
「情熱を注いでいる人たちが自分たちで決めて進めるべき」という出木場氏の考え方は、この「自律性」に対し効果的に働きかけを行うため、この考え方が浸透することで組織全体のモチベーションも向上し、結果として組織力の向上が期待できそうです。
当社もこの考え方で来ましたが、「では、うまくいっているのか?」と聞かれると、、、正直「まだまだ、道半ばです」という状況です。現状は経営状況が順調であり、ベンチャーなのに会社全体として変に安定感が生じていて「現状で満足だから何かを変えていく必要はない」と多くの人が感じてしまっていることが1つの要因だと思っています。また、「自分で決めていいよ」と言われても、今までそうしてこなかったため、なかなか発想ができないというのもあるかもしれません。さらに、企業理念やミッション、パーパスの弱さというのも要因としてありそうです。
このようにいろいろ課題はあり、まだまだ道半ばで、試行錯誤の毎日ですが、このような論文などで学び、思考・試行を止めず、諦めずに最高の組織を目指していきたいと思います。
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