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マイナンバーやマイナンバーカードにおける混同された議論を整理する

松田 幸裕 記


マイナンバーやマイナンバーカードについて、「コンビニで別人のの証明書が発行される」、「マイナ保険証に別人の情報が登録される」、「公金受取口座に別の人の口座が登録される」など、多くの問題が発生しています。これらを原因として、漠然とした不安が国民に宿ってしまい、「マイナンバーをやめた方がいいのでは?」という話まで出ているように思います。

問題の根本原因は私にはわかりませんが、国民が感じている漠然とした不安の中で「マイナンバー」、「マイナンバーカード」、「診療/薬剤等の情報共有」が混同して扱われていて、それが余計に不安を生んでいるように思えるため、以前の投稿「マイナンバーの重要性について再考する ~マイナンバーは極秘情報なのか、それとも手軽に使うべき情報なのか?~」でも一部触れましたが、改めて整理をしてみたいと思います。

マイナンバーについて考える

マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての人が持つ12桁の番号で、原則として生涯同じ番号を使います。社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます。

マイナンバー制度の導入に拍車がかかったきっかけは、2007年の「消えた年金問題」と言われています。加入対象の年金が変更される度に年金番号が変わり、国民の苗字、住所、電話番号なども変わるため、「この年金の記録は誰のものか?」を管理することが非常に困難だったと思います。個人的には「起こるべくして起こった問題」ではないかと思っていて、国民を一意に識別するマイナンバーのようなIDが無い状態でよく管理していたものだと感心してしまいます(結果として管理できていなかったため、感心はできませんが…)。

そう考えると、マイナンバーのようなIDが無い状態は国民にとって悪影響を生じさせる可能性が高いため、マイナンバーはあるべきだと言えます。河野太郎大臣が一気に推進推進し、考慮漏れなど多くのミスが発生して現在の問題となっていますが、マイナンバーに関する法律が成立したのは2013年なのに、保険者番号との紐づけの仕組みを今まで怠っていたということも大きな問題ではないかと感じます。

マイナンバーカードについて考える

マイナンバーカードは、認証(Aさんが本当にAさんであることを証明する)のためのカードです。

一般的に、人を認証する方法は以下のように分類されます。

  • 本人だけが知っているもの(SYK:Something You Know): パスワード、暗証番号など
  • 本人だけが持っているもの(SYH:Something You Have): 携帯電話、スマートカードなど
  • 本人の体の一部     (SYA:Something You Are): 指紋、虹彩、顔など

マイナンバーカードはICチップに電子証明書が入っていて、「本人だけが持っているもの」として利用可能です。また、「本人だけが知っているもの」として暗証番号も利用します。さらにマイナ保険証として使用する際は「本人の体の一部」として顔認証も可能です。顔認証については若干機能として弱さを感じますが、全体的に認証としてはしっかりした仕組みと言えます。

私自身、かなり前からe-Taxを使っていて、住民基本台帳カードの頃から電子的に本人を認証する仕組みを利用しており、マイナンバーカードについては大きな問題を感じていません。強いて言えば、「暗証番号を覚えられない人がいる」ということを考慮していなかったことでしょうか。暗証番号なしのカードを発行する方向になっているようですが、指紋や虹彩など別の認証を使った方が良かったかもしれません。

診療/薬剤等の情報共有について考える

マイナンバーカードを保険証として利用すると、診療や薬剤などの履歴が医療機関に共有され、医師からより適切な治療や処方を受けることができるようになります。これについては、「情報が筒抜けになってしまう!」という理由で、マイナンバーカードを保険証として使うこと自体を悪として見てしまいがちですが、マイナンバーカード自体は前述のとおり認証に使っているだけで、問題とは言えません。問題はそこではなく、診療や薬剤等の情報を共有すること自体ではないでしょうか。このことをマイナンバーカードに紐づけて行ってしまったことで、「情報が筒抜けになってしまう!」という不安がマイナンバーカードに行ってしまったように思えます。

なお、診療や薬剤等の情報が共有されるのは、あくまで本人が承諾した時のみとなっています。そのため、不安であれば承諾しなければいいだけの話ですね。

以上のように整理して見ると、「何が問題なんだっけ?」ということが見えてくると思います。マイナンバーと保険証等との紐づけを長い間怠ってきたこと、いきなり上記のすべてをごちゃまぜにして一気に推進してしまったこと、など政府の進め方には問題があると思いますが、不安に思う我々も全体を整理したうえで、適切に不安を感じで、適切に不満をぶつけていくべきではないでしょうか。