· 

2023年、ITを俯瞰する ~データドリブンへの道程~

松田 幸裕 記


前回の投稿「2023年、ITを俯瞰する ~IT人材不足~」に続き、今回も「2023年、ITを俯瞰する」というテーマで、今を考えていきたいと思います。今回は「データドリブン」について、私たちにデータドリブンがどれだけ根付いているか、データドリブンへの道程として大切なものは何なのか、などについて考えたいと思います。

わからないことだらけの新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの第8波はピークを迎え、徐々に感染者数は落ち着いてきているように見えます。1か月で1万人もの死者を出してしまい、どう見てもコントロールできているようには思えない状態でしたが、今回も「なぜ感染者数が減ってきたのか?」はわからずに終わりそうな予感がします。当初は「検証が必要」という話をするコメンテーターもいましたが、そのような言葉も聞こえてこなくなってしまいましたね。

以前の投稿「新型コロナウイルス対策をデータドリブンの側面で考える その3」で書いた通り、検証は仮説とセットであり、「仮説を証明するためのデータが今存在しない場合は、次に発生した時に採取できるような仕組みをつくる」という形で、仮説と検証を繰り返す意識を持つことが重要ですが、存在するデータだけで推測するという行為が続けられているように感じます。

情報番組などではなぜか取り上げられませんが、最近は「ワクチンは本当に効果があるのか?」という話もされています。私自身も気になっていろいろと情報を見ていますが、つい先日ワクチンの副反応・効果を検証したというページを拝見しました。九州大学の福田治久准教授が中心となって各所からデータを集め、検証してくれていますが、かなり苦労して実現されたようです。これを政府が主導してくれれば、もっと楽に効果的な検証ができると思うのですけどね…。

情報番組が提供するデータの罠

コロナ禍に入ってから、「インフルエンザとの同時流行」が何度か予測されてきましたが、予測は外れて同時流行は起きませんでした。しかし今シーズンは各情報番組で「インフルエンザも流行している」という話が取り上げられています。報道ではその裏付けとして右肩上がりのグラフを示したり、「インフルエンザ患者数が全国で1機関当たりX人」という表現をしたりしていますが…いまいちどのくらい流行しているのかわかりませんよね。

厚生労働省が定期的に情報更新をしている、「インフルエンザの発生状況」を確認してみました。これを見る限り、確かに昨年や一昨年と比較するとかなり増えていますが、コロナ前と比較すると1/5や1/10程度の感染者数となっています。元々「毎年1千万人がインフルエンザに感染し、1万人がインフルエンザをきっかけとして死亡している」と言われていて、例えばその1/5だとしても「2百万人がインフルエンザに感染し、2千人がインフルエンザをきっかけとして死亡」となるため、十分流行していると言えますが、情報番組などでは報道内容の印象を強めたいためか、コロナ前の1/5や1/10であることは伝えず、印象重視で伝えてしまいます。

ここでは情報番組を例として挙げましたが、企業活動の中でも結構あることですよね。何かを提案する際、自身が持っていきたい方向にデータの見せ方を変えて表現してしまいがちです。私たちはこのような「確証バイアス」という心理的傾向を持っていることを意識し、提示されるデータを見ていかなければいけませんね。

私たちもデータドリブンの意識を

上記のように情報番組やニュースでなどでデータを見た時、「へー、そうなんだ」で終わっていませんか?

このようなデータには少なからずバイアスがかかっているため、「ほんとに?」と感じることが重要です。また、仮にバイアスがかかっていないものだとしても、「なぜ?」と思わなければそこで思考は止まり、本質的な問題は見えてきません。

章のタイトルで「データドリブンの意識」と書きましたが、どちらかというと「ほんとに?なぜ?の意識」が私たちには必要なのかもしれません。それが結果的にデータドリブンの意識につながっていくのではないでしょうか。