松田 幸裕 記
マイクロソフトが先日、「Viva Engage」というサービスを発表しました。一見すると「単なる社内SNSで、Yammerに機能が追加されたものをViva Engageと呼んでいるだけ」という解釈になりそうですが、個人的には非常に興味深い動きに見えます。マイクロソフト側の真の思いはわかりませんが、Yammer、そしてViva Engageと変化した「社内SNS」の意義について考察したいと思います。
表面的な変化
元々Microsoft 365の一機能として、Yammerという社内SNSサービスが提供されていました。今回の発表における変化を簡単に表現しますと、このYammerに「ストーリーライン」と「ストーリー」という機能が追加されて一般的なSNSサービスにより近づく形となり、TeamsやOutlook内で表示できる「コミュニティ」と呼ばれていたYammerアプリが「Viva Engage」という名前に変更された、というものになります。
私の認識では、Microsoft 365の中でYammerは企業での利用率が比較的低いサービスです。過去にも本ブログで何度か書きましたが、Yammerなどの社内SNSは「使わなくても業務は回る」という性質を持っているため、導入しただけでは使われず、ユーザーが「使いたい」、「使わなきゃ」と思って初めて使われるものです。組織としてこれらのツールを活用する意義を明確にし、啓蒙をして初めて使われるようになりますが、重要性があまり理解されていないせいか、有意義に活用されている企業は少ないと思われます。
重要性があまり理解されていない中でのYammerからViva Engageへの変化は、「Yammerの名前が変わった」くらいにしか解釈されないかもしれませんね。
Viva Engageの意義
Viva Engageの発表を見ると、背景としてハイブリッドワークやリモートワークによる人と人とのつながりの減退があるようです。この課題を解決するため、従業員エクスペリエンスプラットフォーム(EXP)であるVivaの一機能としてリリースしたものがViva Engageということになります。
このページの中で「社会関係資本」(原文では「ソーシャル・キャピタル」)という言葉が使われています。ソーシャル・キャピタルとは、「人と人とがつながり、関係性を維持することで得られる便益」であり、これが組織の成果を高めると言われています。ソーシャル・キャピタルは暗黙知の交換に効果的と言われていますが、関わり合いが減退してしまえばソーシャル・キャピタルが欠如していき、知の創出も減退していくことになります。また、人と人との関係性も維持しづらくなり、孤独感の増幅、離職率の増加などにもつながってしまいます。
多くの企業では、人と人とが物理的に離れている状況では、業務の遂行に必要なコミュニケーションのみが行われ、それ以外の関わり合いは少なくなります。確かにこれでは、ソーシャル・キャピタルは減退し、組織力の低下へとつながっていってしまいます。この問題を改善する一つの方法としてViva Engageが存在するということになります。
以前の投稿「「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その3」では、人と人との関わり合いの減退が与える影響について整理しました。これらの問題はハイブリッドワークやリモートワークにより顕著に現れやすいですが、それだけでなく、役割の細分化などその他の要因でも現れるものですので、従業員がオフィスに集まっている環境でも気を付けなければいけないものだと思っています。
「 「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その8」では、ソーシャル・キャピタルを醸成するために弊社で行っている取り組みを記載しています。さらに最近では、関わり合いや人への興味を醸成するための新たな施策を、今年4月入社の新卒社員が考えて実践してくれています。機会がありましたら、これらの取り組みも本ブログでご紹介したいと思っています。