松田 幸裕 記
政府は5月20日、新型コロナウイルスの感染対策の一つである「マスクの着用」について、見解を発表しました。屋外でのランニングや鬼ごっこなど、人との距離が確保できる場合や、徒歩で人とすれ違う際なども会話がほぼなければ、マスク着用を不要としました。
本来は一人ひとりが自身で考え、適切に感染対策をすればよいのですが、現在はマスクを外した時の人の目が気になる状況のため、このような政府の見解発表は必要ですね。私自身も定期的にランニングをしているため、この見解発表は助かります。2年前、「ランニング中もマスクは着用すべき」という専門家の意見が発せられた時から、「いやいや、対策すべきはそこじゃないでしょ…。」と思っていましたので、今回の見解発表は嬉しい限りです。次回のランニングから、人が少ないところではマスクを外したいと思っています。
本題に入ります。2年前から始まったコロナ禍をきっかけに、在宅で仕事をする「ワーク・フロム・ホーム」を採用する企業が、世界中で一気に増加しました。それまでもワーク・フロム・ホームは少なからず採用されていましたが、コロナ禍によって半ば強制的にワーク・フロム・ホームを行わなければならなくなった企業は多いと思います。
前回の投稿「「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その6/その7」にて、ワーク・フロム・ホームにおける現状と今後について、改めて考察しました。本投稿では、ワーク・フロム・ホームにおける個人や組織の成長面での課題について考えてみたいと思います。
人事評価、報酬
ワーク・フロム・ホームにシフトするうえで、「日々の部下の業務状況を直接見ることができなくなるが、どのように把握しどのように評価すればいいのか?」という課題は、多くの企業で生じていると思います。「本当に仕事をしているのか?」を判別するために、PCのログ出力結果などを用いて活動内容をできるだけ把握するという検討をした企業も多いのではないでしょうか。
欧米の成果主義が絶対的に正しいとは言いませんが、日本ももう少し労働時間中心の考え方から脱しないといけない気がしています。元々どのような行為が労働時間に含まれるかという線引きは難しいことが多く、ワーク・フロム・ホームによってさらに線引きは難しくなります。「ちゃんと仕事をしているか?」という管理より、「成果を出しているか?」、「その業務遂行は企業に良い影響をもたらしているか?」などの観点で、数値化できる部分はITを駆使して数値化し、できない部分は自身の申告や360度評価で補うなど、評価基準を改めて見直す時期に来ているのではないかと思います。
弊社でも人事評価は日々試行錯誤しながら改善を続けています。上記のように数値化、自己申告、360度評価なども活用し、頑張った人に報いる評価を目指していますが、まだ「これは完璧!」というには程遠い状態です。しかし、そもそも、皆が納得できている人事評価基準を採用できている企業はほとんどないと思います。そうであれば、変化を恐れず、既成概念にとらわれず、新たな評価の仕組みにチャレンジしてみてもいいのではないかと思っています。
組織力
組織力を向上し、日々改善を続けイノベーションを起こし続ける企業になるためには、いくつか必要なことがあります。
例えば、「従業員エンゲージメント」は一つの重要な要素です。従業員エンゲージメントとは、従業員が自社に対して持つ自発的な貢献意欲を意味します。従業員エンゲージメントが高ければ、企業が掲げるビジョンを従業員がしっかり理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献し、問題解決も盛んに行われ、イノベーションも頻繁に生まれます。
また、「ソーシャル・キャピタル」も同様に重要です。ソーシャル・キャピタルとは、「人と人とがつながり、関係性を維持することで得られる便益」であり、これが組織の成果を高めると言われています。
これらはともに、ワーク・フロム・ホームによって減退してしまう可能性があるため、人と人との関わり合いを活発に行い、目指すべき方向について話し合う機会をつくるなど、今まで以上に気を配る必要があります。例えば弊社では、ワーク・フロム・ホーム中心の日常の中で、以下のような工夫を行っています。
- Web会議では、必ず顔を見せて会話を行います。モヤっとした相談事などを行う際、話し手は受け手の表情が見えないと話しにくくなり、あいまいな内容の話をしなくなります。弊社ではそのような会話も歓迎し、顔を見せ、「会議時間は極力短く」という制約も設けないようにしています。
- 週1回、組織の課題や改善などについてディスカッションする場を設けています。誰もが問題提起でき、誰もが意思決定の中心にいられる環境をつくっています。それが終わった後は、30~60分間、仕事とは関係ない雑談タイムなども設けています。
- 社内SNS(Yammer)を使い、気づきの共有や相談などを行っています。物理的に近くにいることが少なくなっている分、このようなツールを積極的に活用し、組織での暗黙知交換を活発に行うようにしています。
- 毎日1時間、「空間共有の場」という、目的もなくつながっているWeb会議の場を設けています。会議などが入っていない人はここに集まり、「同じ空間にいて仕事をしている」という状況をつくっています。皆が黙々と作業をしていて、10~20分間誰もしゃべらないこともありますし、「誰か、これ知ってる?」、「XXさん、そういえばあの件どうなった?」など、普段オフィスの近くの席で行われるような自然な会話をそこで行っています。常時つながっていると窮屈かもしれませんが、このくらいの時間がちょうどいいかもしれません。
弊社もまだまだ完璧には遠く、試行錯誤しながら日々改善を続けています。また何かトライして気づきが得られたら、このような形で共有できたらと思っています。