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「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その6

松田 幸裕 記


JRの恵比寿駅で、ロシア語の案内表示を疑問視する意見が相次いだことによって、案内表示の上に紙を貼って隠したという出来事がありました。その行為に対しSNSで批判の声が広がり最終的には元に戻したそうですが、このような出来事は「日本にあるロシア人飲食店への嫌がらせ」、「旅館でのロシア人宿泊受入停止」などいろいろな場面で見られました。

これらの行為については「ロシア人であるという理由だけで非難すべきではない」という考えが概ね浸透してきたようで、このような行為はなくなっていくことを期待したいですが、、、でも、「どこまでが善でどこからが悪か?」というラインを考えると、簡単な話ではない気がしています。

現在、欧米各国や日本がロシアに対して経済制裁を行い、企業がロシアでの営業停止や撤退を進めています。これらの行為は、ロシア国民へ影響を与えるでしょう。在日ロシア人を苦しめるのは悪で、ロシア在住のロシア人を苦しめるのは善と言ってよいのか、ロシア国民による国への働きかけに期待するのであれば、ロシア国民を苦しめるという方法以外に、もっと有効な策があるのではないか、、、善と悪の境目は人それぞれ異なりますが、一人ひとりがこのラインをしっかり考えることが重要だと感じました。

本題に入ります。2年前から始まったコロナ禍をきっかけに、在宅で仕事をする「ワーク・フロム・ホーム」を採用する企業が、世界中で一気に増加しました。それまでもワーク・フロム・ホームは少なからず採用されていましたが、コロナ禍によって半ば強制的にワーク・フロム・ホームを行わなければならなくなった企業は多いと思います。

以前の投稿「「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その1~その5」にて、ワーク・フロム・ホームにおける業務の生産性などについて考えました。久しぶりの投稿である「その6」では、新型コロナウイルスの弱毒化、ワクチンや治療薬による対策なども進み、徐々に日常を取り戻すことができてきた今、ここで改めてワーク・フロム・ホームについて考えてみたいと思います。

ワーク・フロム・ホームの現状は?

公益財団法人 日本生産性本部が、2020年5月以降定期的に「働く人の意識調査」というアンケート調査を行っています。ここから、以下のようなことがわかります。

  • ワーク・フロム・ホーム実施率は、初回の緊急事態宣言の頃は30%程度、それ以降は20%程度で横ばいとなっている。
  • ワーク・フロム・ホームでの効率は、コロナ禍が始まった頃と比べ改善されてきている。
  • ワーク・フロム・ホームでの満足度は徐々に上がり、直近では8割の人が満足している。
  • 8割の人が、コロナ禍収束後もワーク・フロム・ホームを行いたいと思っている。

最新のアンケート調査が今年1月のため、このアンケート調査ではワーク・フロム・ホーム実施率の低下は顕著には見られませんが、この後徐々にオフィス回帰の動きが各企業で見られるでしょう。ただ、多くの人が今後もワーク・フロム・ホームを行いたいと思っているようで、とても興味深い結果ですね。

余談になりますが、ワーク・フロム・ホームをする比率が高まり、通勤定期代を廃止して実費精算に切り替える企業も出てきています。社員からは「定期代でも実費精算でも、通勤に使った費用をもらっているのは同じなので、特に変わらない」と見えますが、実際は通勤手当にはなぜか社会保険料として約15%(折半のため企業負担も約15%)がかかっているため、通勤手当は少ないに越したことはないのですよね。極端な例として、定期券を買って毎月15,000円の通勤手当をもらっていた人が完全なワーク・フロム・ホーム(通勤手当ゼロ)になり実費精算に変わった場合、今まで天引きされていた15,000円×15%=2,250円を天引きされなくなります。

この額に加え、通勤に費やしていた1日2時間も不要になりますので、働く人達にとってワーク・フロム・ホームにはやはり魅力がありますよね。

今後もワーク・フロム・ホームは必要なのか?

コロナ禍収束後、ワーク・フロム・ホームは必要なのでしょうか?私は以下のような観点で、今後も必要と思っています。

  • 前述のとおり、働く人が望んでいるという事実は大きいです。「ワーク・フロム・ホームができないから、ワーク・フロム・ホームができる会社に転職する」という動きはさほど多くはならないと思いますが、何らかの理由で転職をする際、あるいは学生から社会人になる際、「ワーク・フロム・ホームが可能か?」という観点は大きな選定ポイントになるかもしれませんね。
  • 介護や育児との両立を実現する手段として、ワーク・フロム・ホームは極めて有効です。仕事の合間に介護や育児をすることも容易になるため、介護や育児をしながらでも働きたい、働く必要があるという人の助けになるでしょう。
  • 台風、熱波、地震など、自然災害は今後も発生するでしょう。そんな時にも業務をできる限り止めないようにするという目的でも、ワーク・フロム・ホームが有効になります。

また、ワーク・フロム・ホームの発展形として「会社から遠い場所に住むことができる」という利点も期待できます。首都圏に人口が集中し、過疎化が進む地域が増加してしまっていますが、この問題を解決する一つの有力な策としても、ワーク・フロム・ホームは位置づけられます。

本投稿では「ワーク・フロム・ホームは今後も必要である」という話でまとめましたが、一方でワーク・フロム・ホームにおける課題も無視できません。次回投稿では、弊社での2年間のワーク・フロム・ホーム経験なども踏まえ、ワーク・フロム・ホームにおける課題を考察してみたいと思っています。