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日本におけるDX推進の阻害要因を探る

松田 幸裕 記


新型コロナウイルス感染者数がピークの頃から半分程度までに落ち着き、横ばいの状態が続いています。そんな中、情報番組のコメンテーターなどから、「重要なのは死者数や重傷者数を減らすこと。新規感染者数に一喜一憂しない。」という声が増えたように思えます。

確かに、一喜一憂だけしても仕方ないのですが、新規感染者数の推移は最も早く兆候をつかむための重要なデータであるため、引き続き注視していくべき指標だと思っています。新規感染者数の変化を早期につかめれば、その後の重傷者数や死者数を抑える対策も打ちやすくなります。

現状は新規感染者数の推移を見て一喜一憂するだけで、迅速に対策を打てていない気がしています。新規感染者数を気にしないようにするのではなく、一喜一憂でもなく、迅速に対策を打つことが重要なのではないか、そのように思う今日この頃です。

本題に入ります。先日、「DX推進の阻害要因は“管理職のITリテラシー不足” リンクアカデミーが「企業のDX推進における課題」を調査」という@ITの記事を拝見しました。デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進していくうえで阻害要因となっているのは何なのかを、各企業へのアンケート調査によって示したものです。管理職のITリテラシ不足など、いくつかの課題について触れられていて参考になるため、興味がある人はぜひこちらのページをご一読ください。

本投稿でも、このテーマについて考えてみたいと思います。大規模なアンケートなどはできませんが、「そもそもDXって何だっけ?」、「DXを推進するには何が必要?」、「日本企業の現状は?」などについて、私自身がITの現場で見てきた感覚なども含めて考察してみたいと思います。

そもそもDXって?

総務省の「令和3年 情報通信白書」では、以下のようにDXの定義が説明されています。

「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

さらに以下のような図で、DXとデジタル化の違いについて説明をしています。

情報通信白書を毎年読んでいる人は「あれっ?」と感じたかもしれません。実はその2年前の「令和元年 情報通信白書」にも同じようにDXの定義が下図のように説明されていますが、令和元年の「これがDX」という概念図が、令和3年では「それはデジタライゼーションであり、DXではない」という説明に変わっています。

どう解釈すべきかはその人次第でいいと思いますが、、、シンプルに考えると「デジタル・トランスフォーメーション」は「デジタルを活用したビジネス変革」と解釈できるため、個人的には「令和3年 情報通信白書」の「デジタライゼーション」はDXに含めていいと思っています。どちらにしても、DXとは「デジタル技術を当たり前のように活用し、ビジネスの変革を繰り返していくこと」になりますね。

DXを推進するには何が必要?

上記の通り、DXを「デジタル技術を当たり前のように活用し、ビジネスの変革を繰り返していくこと」だとすると、DXを推進する上で必要なものは以下の2つということになります。

  • デジタル技術のノウハウ
  • ビジネス変革を繰り返す仕組み

前者については、前述の@ITの記事にも「ITリテラシ」などが課題として挙がっていることから、十分に課題として認識されていると思われます。しかし、DXは「変革」であり、常に変化、進化していく仕組みづくりが重要であることを忘れてはいけません。DXを説明する書籍などではよく「デザイン思考」の必要性についても書かれていますが、それだけ新たな課題認識や新たな発想が重要だということなのでしょう。

日本企業における課題は?

前回・前々回の投稿「日本におけるIT人材不足の原因を探る その1その2」で、様々な要因から人の成長や組織の知識創造が抑制されているのではないかという話をしました。この話は人材不足のみでなく、DX推進を阻害する要因としても当てはまるのではないでしょうか。「私は決められたことをやるだけ」、「最低限やることだけやっていればいい」という考え方では、新たな課題認識や新たな発想は生まれづらくなります。効率化ばかりに目が行ってしまうと、人々の気付きの醸成もされません。次々と流れてくる情報を拾い読みするだけでは、変革につながるような深い思考をする脳が働きません。

IT、デジタルという側面も重要ですが、それと同じく、またはそれ以上に重要なものは、「常に課題意識を持ち、思考と行動を止めず、改善を続けようとする姿勢」なのではないでしょうか。