松田 幸裕 記
北京で行われている冬季オリンピックが盛り上がっています。スキージャンプの男子ノーマルヒルで金メダルをとった小林陵侑選手、昨日スノーボード男子ハーフパイプで金メダルをとった平野歩夢選手他、最高のパフォーマンスを発揮している選手たちから日々感動をもらっています。
弊社はテレワーク中心で、「定時の時間帯は絶対仕事をすること!」などの厳しいルールはないため、ミーティングが入っていない時間帯であれば例えば「これだけは見たい!」というオリンピック競技をテレビで見ても、特にとがめられることはありません。私自身も一昨日のフィギュアスケート男子フリーをテレビで見ました。このような時のためにテレワーク中心にしているわけではありませんが…プライベートを考慮して時間管理しやすいことはテレワークの一つのメリットかもと改めて感じた今日この頃です。(自己管理ができない人にとっては、結果として評価や給与が下がることにもなりかねないため、注意が必要ですが…。)
本題に入ります。本投稿では「意思決定」や「合意形成」に関する話をしたいと思います。コロナ禍に入って2年間、政府や自治体では感染拡大や病床逼迫などの問題と戦ってきましたが、適切な対策が講じられてきたかというと、疑問符が付く場面は多かったのではないでしょうか。未来のことはわからないため、予期しないことによって対策が効果を発揮できなかったということは仕方ないとして、対策が発表された時点で「えっ?なぜそんな対策なの?」と疑問に感じる対策も多かったのではないかと思います。
こういう事象は、コロナ禍のみでなく日常の企業活動の中でもよく見られるのではないでしょうか。従業員から見て「えっ?なぜそんなことをするの?」という施策が経営層など上層部から発表されたりして、疑問を持ったまま従うしかない…そんなことも多いのではないかと思います。
権力のある人が思い付きでも「これでいくぞ!」と言ったことで簡単に物事が決まってしまうような組織の場合は、シンプルですが最も改善が難しい問題ですね。この権力者のセンスや能力がずば抜けている場合はまだいいですが、そうでない場合は大変です。この「権力」に関する問題については過去の投稿「ステークホルダー資本主義が主流となる時代はやってくるのか?」、「ITは雇用を創出するのか?雇用を奪うのか? その5」などで触れていますのでそちらに譲り、本投稿では建設的に議論、合意形成を経て意思決定ができる環境で、どのように最適な意思決定を行うかを考えたいと思います。
意思決定 全体像
この図は過去に私が作成したもので、意思決定を行ううえで今も意識しているイメージです。難しく表現しているかもしれませんが、意思決定は皆さんも日々の生活の中で行っていますよね。わかりやすく、例として「車を買い替える」という行為における意思決定を挙げ、話を進めていきます。
現実(事象理解・原因深掘り)
「なぜ車を買い替えるのか?」、「現在の課題は?」などを整理します。感覚的に「古くなってきたから」、「ガソリン代を結構使っている気がする」などを挙げられるかもしれませんが、「その感覚は本当?」と反証する気持ちで、「総走行距離は?」、「最近の燃費は?」など客観的な数値として整理します。もし「最近の燃費がわからない…」という場合は、次回からガソリンを満タンにしたタイミングで走行距離カウンターをリセットし、その後給油したガソリンの量と走行距離で算出すればわかります。
コロナ禍での対策を見ていると、「データが無いから原因もわからず、対策もできない」という現象が起きているように思えます。情報番組などでコメンテーターは「検証してほしい」とよく言いますが、データが無ければ検証もできません。どうしたらデータが得られるかを考え、その後の検証に備えてデータを採取するための仕掛けをつくることも重要です。
理想(あるべき姿の探求)
要は「どういう形にしたい」を考えることですが、現時点で自身が感じている課題のみがすべてではない可能性は高いです。例えば、「今の燃費は一般的な数値と同程度なので仕方ない」と思ってしまえば、燃費は課題と思わなくなります。しかし、例えば「ハイブリッド車は燃費が良い」ということを知ると、そこで初めて今の燃費が課題となります。今の状態が当たり前なのか、改善の余地があり、課題とみなしていいものなのかを、最新技術の調査などで見極めることが必要です。
また、「アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が多い」、「環境問題が背景にあり、電気自動車が注目されている」など社会の動向も、あるべき姿を描くうえで情報として必要になります。
このような形であるべき姿を考えていくと、先ほどまで見えていなかった現状の課題が浮かび上がることは多くありますので、適宜上記の「現実(事象理解・原因深掘り)」に戻って再考する必要があります。
対策(改善点)
上記の「現実」と「理想」のギャップを埋めるために、どのような対策があるかを考えます。選択肢として挙がる複数の対策案は、「理想にかなり近づくが、コストが高い」、「コストが低いが、理想に近づけない部分がある」など、それぞれ性質が異なります。そのため、各対策をいくつかの視点で整理していきます。例えば車の購入では、理想に近づけるいくつかの車種を選択肢に入れたり、もしかすると「所有せず借りる」なども選択肢に入れるかもしれません。そして「初期費用」、「維持費」、「収容人数」、「運転のしやすさ」、「利用の手軽さ」、「安全性」などの各視点で整理していきます。
ロードマップ
複数の選択肢から方向性が決まったら、あとは「どのように進めるか」です。「段階的に進めていき、ここで成果が見えない場合は中止する」など、リスクを回避する進め方もあります。例えば車の購入では、「まずその車種をレンタルで少しの間利用してみて、問題なければ購入する」、「今はレンタカーにし、子供がX歳になった時点で購入」などの進め方もあるでしょう。現状と今後を考慮し、進め方を考えて進めていき、進み始めた後も必要に応じて適宜見直して、軌道修正していく必要があります。
車の買い替えのように、自分だけ、あるいは家族に相談して決める程度であればいいですが、組織内のステークホルダーで適切に合意形成するためにはやはり上記のような形でわかりやすく整理・可視化し、議論を必要以上に発散させないようにしたり、近視眼的にならないようにする必要があります。意思決定の最後は客観ではなく主観で行われますが、それまでの合意形成は適度な客観が必要です。ITに限らず、最適な意思決定のために、本投稿が役に立てたら幸いです。