松田 幸裕 記
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しています。政府も万策尽きた状態のようで、緊急事態宣言やまん延防止など、各種対策の効果は薄まる一方で、改善の兆しは見えません。
緊急事態宣言の効果が薄れているのは政府の対策の問題とも言えますが、別の見方をすると国民の問題でもあります。一人ひとりが気を付けて行動すれば感染拡大は治まるのですが、「緊急事態宣言?意味ないでしょ」、「オリンピックをやるんだから自分たちも」など何かと言い訳をして緩みっぱなしになり、その結果自分たちを苦しめる結果に持って行っている、という不思議な光景に思えます。
昨日、河野太郎行政改革担当相が、緊急事態宣言が発令されている13都府県にワクチンを優先的に配分するという考えを明らかにしました。一見理にかなっているように見えますが、、、人々が緩んだ結果として感染拡大が起こるという見方をすると、優先的に配分されない地域の人たちは、「なんで緩んだ人たち、我慢できない人たちが優先されるの?」、「緩んだもん勝ちってこと?」という気持ちになるかもしれませんね。「私たちは我慢できないから先に接種します」という仕組みに見えてしまい、なんだか気持ち悪いです。
本題に入ります。ハーバード・ビジネス・レビュー2021年6月号に、「採用プロセスの再構築」という論文が掲載されていました。IT人材の採用はIT企業もITのユーザー企業も課題を抱えていることと思います。本論文はIT人材に特化した話ではありませんが、これを題材にIT人材の採用について考えてみたいと思います。
なお、本投稿では論文の項目など一部のみピックアップするにとどめています。詳細を知りたい方はぜひ書籍をご購入ください。
人材採用にまつわる傾向
本論文では人材採用における傾向として、以下の3点を挙げています。
- 必要とされるスキルの短命化
- これまで利用していた人材プールが役に立たなくなっている
- 求職者の企業選択が慎重になっている
1点目の「必要とされるスキルの短命化」については、ITに限らず他の業務も含め、技術進化やニーズの変化などが激しく、今まで持っていたスキルが古くなって価値を生まなくなるという頻度はより高くなっていると私も感じます。ITの世界はなおさらかもしれません。「このクラウドサービスの導入方法を理解した!」と思っても、1年後には大きく変化していたりしますよね。絶えず学びが必要な状況です。
2点目の「これまで利用していた人材プールが役に立たなくなっている」は、一流大学からの採用、同業他社からの採用など、今までのルートのみでなく他のルートでも人材を発掘できるようになったという傾向です。日本ではさほどこの感覚は持っていないかもしれませんが…弊社では、ITとは全く別の業種にいて3か月ほどITの学校でITを学んだ人を今年採用しました。このメンバーが抜群のセンスの持ち主で、他のIT経験者に引けを取らないくらいに活躍しています。現状の人材プールから採用する場合はどうしても経歴を見てしまいますが、重要なのはそこではないのかもしれません。
3点目の「求職者の企業選択が慎重になっている」は、大企業で安定している、報酬が高い、というだけでなく、他の多くの面で吟味して企業を選択しているという傾向です。最近は働き方の柔軟性などが重要視されているかもしれませんね。中小企業の弊社としては、選択の評価軸が増えていることは嬉しい限りです。
企業が取るべき重要な行動
本論文では企業が取るべき重要な行動として、以下の2点を挙げています。
- 経験ではなく可能性で採用する
- 卓球台や無料スナック以上のインセンティブを
1点目の「経験ではなく可能性で採用する」ですが、人材採用では履歴書、職務経歴書、数回の面接のみで判断する必要があるせいか、どうしても経験を見てしまいます。しかし、経験を見て採用して「失敗だった…」という経験を持つ採用者も多いのではないでしょうか。
弊社では今年から新卒採用を開始しました。理由の一つとして、「考え方が凝り固まっていない可能性が高いから」というものがあります。私も含め、何年も企業で仕事をしていると、ルールややり方など様々な面で「そういうもの」として扱ってしまい、疑問を持たず自身を当てはめて業務を行ってしまいます。子供の頃は何を見ても「なんで?」「なんで?」と聞いていたのに、少しずつ疑問に思わなくなり、「そういうもの」として受け入れるようになってしまいます。イノベーションという大袈裟なものでなく、一つひとつの改善や進歩は「なんで?」から生まれることが多いため、この「なんで?」を大切にしていきたいと思っています。そういう意味で、「なんで?」が消えていない人を新卒採用という形で見つけたいと思いました。もちろん、せっかくの「なんで?」を弊社の中で消してしまわないように、私たちも既成概念にとらわれずにいきたいと思っています。
2点目の「卓球台や無料スナック以上のインセンティブを」ですが、日本には卓球台などが置かれている企業はあまりないですかね(私が過去に勤務していた外資系企業では、確かテーブル・フットボールの台やビリアード台が置いてあった記憶があります)。一言でいえば、「求職者が求めているのはそこじゃない」ということなのでしょうね。福利厚生、高い報酬などは引き続き重要であることに変わりはないですが、見逃しがちな「ワクワクする環境」、「自分たちで決めて行動できる環境」などが必要な気がしています。
何が正解かは断言できませんが、このような論文も参考にしつつ、しっかりとした考えを持って行動して形にしていきたいと思っています。