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JUAS 企業IT動向調査報告書2021から今を読む その5

松田 幸裕 記


東京オリンピック、盛り上がっていますね。私も日々、感動をもらっています。明日で閉会となりますが、最後までアスリートの皆さんを応援したいと思います。

いろいろと批判の対象になったオリンピックですが、批判に負けず無事開催され、アスリートの皆さんの夢の舞台を奪われずに済んで、本当に良かったと思っています。パラリンピックは8月24日に開催予定ですが、また野党やメディアの皆さんは開催反対派に回るのですかね。特にメディアの皆さんは「コロコロ変わりすぎでは?」など指摘されることが予想されるため、さすがにパラリンピックへの反対はないと思いますが、パラリンピックも無事開催されることを願っています。

本題に入ります。前回までの投稿「JUAS 企業IT動向調査報告書2021から今を読む その1その2その3その4」では、JUAS(一般財団法人 日本情報システム・ユーザー協会)から公開された「企業IT動向調査報告書 2021」より、経営課題にまつわる傾向、セキュリティ、アプリケーション、そしてデータ活用について考察しました。本投稿がこのテーマの最後になりますが、さらに視点を変えて、テレワークをはじめとした働き方について考えてみたいと思います。

テレワーク実施状況の推移

「在宅勤務状況の推移(第 1 回、第 2 回緊急実態調査結果より)」というアンケート結果があります。これによると、2020年10月時点で「全社で在宅勤務を実施している」と「一部困難な業務(対面のサービス業務、生産ラインなど)を除いて、在宅勤務を実施している」を合わせると47%になります。

在宅勤務状況の推移(第 1 回、第 2 回緊急実態調査結果より)

私が見てきている中での感覚では、実際はもう少しテレワーク率は低い気がしています。所詮私の感覚ではありますが、実際は出社が必須な業務以外でも「出社しないと仕事にならない」として出社することは多く、それらの業務を「一部困難な業務」に含め、「一部困難な業務以外は在宅勤務をしている」と回答しているようにも思えます。

また、これも私の感覚ですが、この2020年10月以降、かなりテレワーク率が下がっているように思います。空気的に「もう政府や自治体から『テレワークしてください!』と強く言われなくなってきたし、他の企業も徹底していないようだし、従わなくても大丈夫かも」という感じになっていて、かなりコロナ前に近づいている感覚があります。

今後の働き方を考えるうえで最も重要なテーマであるテレワークですが、気が付けば自然にテレワークから脱して元に戻っているようです。テレワークのメリットをデメリットが上回っているためでしょうか。

テレワークによる生産性の変化

「業務別 テレワーク(在宅勤務)実施者の生産性の変化」というアンケート結果があります。これによると、テレワークによって「生産性が向上する」が概ね10%、「生産性は低下する」が概ね40%、「変わらない」が概ね50%となっています。

業務別 テレワーク(在宅勤務)実施者の生産性の変化

このレポートの表現では「テレワークによる生産性の低下を指摘する企業は半数に満たない」とありますが、、、素直にグラフを見れば「生産性の向上より低下を指摘する企業の方が著しく多い」と解釈できると思います。厳密には通勤に要する時間は労働時間に含まれませんが、毎日の通勤時間や取引先への訪問などが無くなれば各個人の感覚的には生産性が向上したと感じ、アンケートに反映されてもおかしくないと思うのですが、そのプラス要因よりも大きなマイナス要因があるのかもしれません。

過去の各種投稿でも触れてきましたが、「社員間のコミュニケーションがスムーズに行えない」、「社外からは業務システムを扱う際に手順が煩雑になる」など、テレワークにおけるいくつかの大きな課題があるでしょう。しかし、「だから、コロナ禍のような有事の時だけテレワーク」という考え方でなく、テレワークにおける課題と向き合って解決していかなければいけない気がします。

以前の投稿「JUAS 企業IT動向調査報告書2021から今を読む その4」で「地球が壊れていっている気がする」という表現で昨今多く発生している大雨による洪水や土石流、熱波などについて触れましたが、「今までの働き方で通用するのか?」と感じる出来事は多いです。これらの出来事に備え、できる限りテレワークでも生産性を下げない、逆に上げるくらいに準備していく必要があるのではないでしょうか。

現状のテレワークにおける課題を解決するためには、ITとしてはネットワークやセキュリティにおける基本的な思想も再考する必要があると思います。現状は「ほんの一部の従業員が社外にいる」という想定での設計になっている企業は多く、その場合は有事に対応することが困難です。技術的にはそのような課題を解決するための方法が用意されているため、あとは組織としての思想の確立と行動があれば実現可能です。実際にはITの要素だけ改善しても組織としての仕組みや風土なども変えていかなければならないため大変ですが、ITが足かせにならないよう、先行して改善していきたいですね。