松田 幸裕 記
緊急事態宣言が一足早く解除された関西圏などで、再度新型コロナウイルス感染者数が増加しており、早くもまん延防止等重点措置の適用が決定されました。
この中で「マスク会食の義務化」が大阪市で適用されるという話があります。私個人としては今までも書いてきた通り、ハンマー&ダンスの繰り返しから脱却するためにはマスク会食など飲食中の対策が不可欠と考えており、マスク会食の義務化も前向きに試してみるべきと思っています。橋下徹氏は番組などで積極的にこの対策の必要性を訴えていますが、現状多くのニュース番組や情報番組ではマスク会食に否定的なコメントが多いようです。
横並び体質が強い日本では、「空気づくり」が対策の重要なポイントになります。しかし最近の「政府や自治体から政策が出されると、そのことによって困る人を探し出して報道し、政策を否定的に取り扱う」というメディアのやり方を見ていると、日本全体での空気づくりは難しく、残念ながらマスク会食義務化も難航しそうな気がしています。
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。前回までの投稿「「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その1/その2/その3」では、ハーバード・ビジネス・レビュー2020年11月号の特集「ワーク・フロム・ホームの生産性」を題材に、ワーク・フロム・ホームにおける業務の生産性について考えました。「その2」と「その3」では、見落としがちな「関わり合い」についてフォーカスを当てましたが、本投稿ではズームアウトして全体の話をしたいと思います。
ハーバード・ビジネス・レビュー2021年2月号「特集:組織のレジリエンス」の中にある、「リモートワークで組織の生産性を高める方法」という論文は、とても参考になる内容でした。興味のある方にはぜひ購入してお読みいただきたいと思っていますが、本論文で扱っている項目レベルだけでも、「ワーク・フロム・ホームを最適化するには、こういう観点での検討が必要」という意味で参考になるため、ご紹介したいと思います。
ワーク・フロム・ホームによる効果
- 個人における効果
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- 個人にとって、「住む場所の選択肢が広がる」、「移動時間の無駄を削減できる」など大きなメリットが存在します。
- 組織における効果
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- 上記の「個人における効果」による従業員エンゲージメントの向上、オフィススペースの縮小によるコスト削減など、組織にとっても大きなメリットが存在します。
- 社会における効果
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- 人口集中による過疎化等の問題、通勤におけるエネルギー消費の問題など、社会という観点でもメリットが存在します。
ワーク・フロム・ホームにおける課題
- コミュニケーション、ブレインストーミング、問題解決
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- コミュニケーションにおいて、Face to Faceに勝るものはありません。それぞれの人が離れた場所にいる状況で、どのようにコミュニケーションを円滑に行い、問題解決や意思決定を最適に行うかは大きな課題です。
- 知識共有
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- ワーク・フロム・ホーム以前から組織における大きな課題ではありますが、ワーク・フロム・ホームによってさらにこの問題が響いてくる可能性があります。普段から近くにいることで気軽に相談したり、教え合っていた環境がなくなることによる問題をどう回避するかを考える必要があります。
- 社会化、仲間意識、人材育成
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- ワーク・フロム・ホームによって関わり合いが減退すると、人が孤立していき、信頼関係も薄くなるため、この問題をどう回避するかを考える必要があります。
- 業績評価と報酬
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- 上司と部下が近くにいないため、評価がしづらくなります。わかりやすく成果を数字で出して評価している組織では問題が少ないかもしれませんが、多くの会社はこの点が大きな課題となるでしょう。
- データセキュリティと規制
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- ワーク・フロム・ホームによるIT環境の変化に付け込んで、攻撃が行われる事例も増えています。ワーク・フロム・ホームにITを対応させることにより生じるセキュリティリスクを見極め、適切な対策を講じていく必要があります。
論文ではこれらの各項目において、事例や調査結果を含め丁寧に説明されています。興味のある方はぜひ購入し、読んでいただくことをお勧めします。