松田 幸裕 記
以前の投稿「データドリブン経営の実現にむけてその1~その5」において、データドリブン経営の実現につながるのではないかと思う要素に少しずつ触れていっています。本投稿では、データドリブンの効果を高めるための、カスタマージャーニーという観点について考えてみたいと思います。
先日、「ハーバードビジネスレビュー 2020年1月号 特集:顧客体験は進化する」を読みました。AI、IoT、5Gなど、今後のビジネスに大きな影響を与える革新的テクノロジーをどのように使って、顧客と企業が長期の関係を築き、つながり続けるモデルへ転換していくかについて、いろいろな観点での論文が掲載されています。
この中で私の頭に残ったのは、「カスタマージャーニー」というキーワードです。このキーワード自体、本書籍に頻繁に登場してきたわけではないのですが、改めて重要性に気付かされたという意味で、私の頭に強く残ったのだと思います。
カスタマージャーニーは、直訳すると「顧客の旅」です。顧客が商品やサービスを知り、購入・契約し、利用するまでの一連の「旅」における、顧客の行動、思考、感情などの遷移をカスタマージャーニーと呼びます。ペルソナ(商品やサービスの典型的な利用者像)を抽出し、一連のプロセスでの顧客の行動、思考、感情などの遷移を「カスタマージャーニーマップ」などの表現方法で視覚化し、「旅」を快適にするための策を考えます。
カスタマージャーニーはユーザージャーニーとも呼ばれますが、顧客だけでなく、例えば社内ITの利用者の「旅」を表現するためにも使えます。
ハーバードビジネスレビューの論文に話を戻します。この中で興味深かったのは、「USJは顧客体験をデータドリブンで進化させる」という論文です。「データドリブン・マーケティング」プロジェクトを発足させ、検討を重ねたのですが、当初はうまくいかなかったそうです。理由は、データの収集が目的になってしまい、ゲストにとっての価値を見失ったためです。そこで、いったんデータドリブンの発想を捨て、「テーマパークジャーニー」を理解することから始めた、という話です。
闇雲にデータを集め、マイニングや機械学習にかけることで、もしかすると何かが見えてくるかもしれません。ただ、データの有効活用における効果を最大化するためには、まずカスタマージャーニーを理解し、顧客の目線で考え、課題やニーズを理解することが重要です。そのうえでデータドリブンを重ね合わせることで効果は最大化されます。カスタマージャーニーとデータドリブンはともにデジタルトランスフォーメーションを実現するための重要な要素であると言えます。
上記の論文には、ぶつかった壁、その壁をどのように乗り越えたか、などが詳細に描かれています。ここでは超概要に留めましたが、興味のある方は、ぜひ論文を購入して読んでみてください。