松田 幸裕 記
最近、「会議の無駄」に関するいくつかの情報に出会いました。ITとの接点は部分的なものかもしれませんが、本投稿ではこのテーマに触れてみたいと思います。
-
大企業でのムダな会議の損失 年間67万時間と15億円
パーソル総合研究所と立教大学の中原淳教授によって行われた無駄な社内会議による損失の推計、日本マイクロソフトでの会議の見える化事例などが紹介されています。
-
ハーバード・ビジネス・レビュー2019年9月号 「ダメな会議から脱却する4つのステップ」
ノースカロライナ大学のスティーブン G. ロゲルバーグ氏の論文です。効果的な会議にするために「評価」→「準備」→「ファシリテーション」→「再評価」のプロセスで意識すべきことなどが紹介されています。
会議に関する問題は昔から言われており、会議の改善に関する書籍も出続けています。しかし、書籍が出続けているということは問題が今も解決されていないということであり、会議に関する問題というのは世界的に相当根深いものであることがわかります。
私自身、ITの側面で働き方の改善について支援することがあり、会議にまつわる業務について例えば以下のような課題へ対策案を提示したりしています。
予定表の活用
以前、ある企業での会議の準備方法を観察させてもらったことがあるのですが、会議招集者がグループウェアで各参加予定者の予定表を確認しながら、一人ひとりに「予定表ではこの時間帯が空いているようですが、予定を入れていいですか?」と電話で確認している光景を目の当たりにしました。各人が入力している予定表は信頼性に乏しいため、毎回電話で確認していたそうです。(更に驚いたのは、その人はそれが当たり前と思っていて、課題という認識は持っていなかったことです。人間の慣れというのは怖いものです。)
会議室へのPC持ち込み
会議中でPCを扱えないことにより、その場で関連資料や過去のメモを確認できず、意思決定の遅れや品質低下という形で悪影響が出ます。関係者へ議事内容を共有する際にも、紙のノートに書いた内容を一から転記して内容を整理する必要があり、手間がかかります。PCを持ち込むと内職(メール確認など別の仕事)をされてしまい会議に集中してもらえない、と主張する人もいますが、内職されてしまう程度の内容の会議なのであれば、内職を推進した方が生産性としては有効かもしれません。
ITだけでは効果に限界がありますので、組織としては更に広げて考える必要があります。「事前の資料共有」「目的やゴールの明確化」「ファシリテーションの最適化」なども含め、総合的に会議を捉えて改善をしていかなければなりません。
しかし、会議に関する問題は今も解決されていません。その理由は何なのでしょうか?
私の持論かもしれず、網羅性もありませんが、理由と思われる根深い問題をいくつか書かせていただきます。
役割モデル
一つの大きな問題として組織の役割モデルがあると感じています。
組織が大きくなっていき、その中で機能的に業務を遂行していこうとすると、どうしても各社員の役割を細分化していく動きになります。一方で、ビジネスは複雑化してきていて、その時々で必要な人材の力を借り、柔軟な判断をしていく必要性も増してきています。
そのような中で一つのタスクを遂行するために関係者を集めると、あの人もこの人も、、、ということになり、関係者は多くなります。そして、中には「なんで私が呼ばれたんだろう…」と疑問を感じながらも「私には関係ありません」とは言えず、とりあえずという形で会議に参加する人も出てきます。
組織内の官僚制
そもそも人間には上も下もないと私自身は思っていますが、一般的な組織には上と下があり、意思決定は上の人がするものという認識がはびこっています。現場内での比較的上下関係のない会議でも「目的の不明確化」など問題はありますが、組織の官僚制による会議への影響は更に根深く、小手先の対策では改善しにくい問題が多いと感じています。
上の人に意思決定してもらうために下の人たちは整理した情報を丁寧にスライドに起こし、入念にレビューを重ね、上の人への報告内容としてまとめます。報告のための会議では上の人からの質問に迅速に回答できないといけないため、関係者は勢ぞろい。しかし結果的にいろいろな指摘をもらい、また次回へ持ち越し。そんな光景も多いのではないでしょうか。
このレベルの問題になると、もはや会議の工夫では厳しく、役割モデルや評価制度、組織風土などから見直す必要があります。「働き方改革」などを全社的に進める中で、上記のような観点を含め改善していくことによって、会議も良い方向へ変わっていくことを期待したいです。
<関連する投稿>